さぁ、始めよう。
二重丸がつけられた漢字ドリル

漢字の成り立ちや由来は、知れば知るほど面白い発見があります。

漢字はパーツごとに意味があり、多くの場合、パーツとパーツの組み合わせによって、異なった意味が表されています。
初めに小さな基本のパーツを知ることで、組み合わさった漢字に出会ったときに、気づきがあったりしてさらに面白みが増します。
国語だけではなく、理科や社会など他の教科への興味へと繋がっていくことでしょう。

目次

「移」は美しい田園風景?

「移」という漢字の成り立ちを紹介します。

「移」という漢字は形声文字に属します。形声文字とは、漢字のパーツとパーツを結合させ、一方を発音の記号、他方を意味範疇の記号を用いて書き表された文字です。
「禾」(のぎへん)は稲穂を示し、(音符)「多」を添えて、稲穂が風に吹かれて、横へ横へとたなびくさまを表しています。

つまり、「移」は型に横へずれていく意味を示した漢字です。何ともビジュアルに訴える美しい漢字ではないでしょうか。

「応」と「圧」って省略しすぎじゃない?

鳥を胸に引き寄せる像
家臣の声をしっかり
受け止めた家康

現代私たちが使っている漢字には、省略された形や象徴的な部分だけを残したものがあります。
「応」・「圧」という漢字の例を紹介します。

「応」の中に鳥がいる?

「應」→「応」

「応」は、会意兼形声文字に属し、部首は「こころ」です。もとの漢字は、「應」ですが、現在でも使用されています。分解すると、「广(おおい)+人+隹(とり)+心」という構造になっており、人が胸に鳥を受け止めたさまを表しています。

つまり、「応」は心でしっかり受け止めること、さらには先方から来るものを受け止める意味を含めた漢字です。
「應」が「応」だなんて、「省略しすぎ!」って言われそうです。(笑)

「圧」の中に熊と犬がいる?!

「壓」→「圧」

「圧」という漢字も会意兼形声文字に属し、もとの漢字は、「壓」です。「厭」の部分は、「厂」+「熊」+「犬」を表し、あぶら肉の多い肉(犬肉、熊肉)におおいをかぶす、つまり「しつこさにあきあきさせる」という意味を示します。
さらに土をかぶせておさえつけるという意味を持つ、これもまた省略しすぎの漢字となります。

「確」と「鶴」って「隺」は同じでも別物?

パーツの形は同じでも全く別の意味を持つ漢字があります。「確」と「鶴」の例を紹介します。

「確」という漢字は、「いし・いしへん」が部首で、形声文字に属します。「隺」の部分は「カク」を音符とし、芯がしっかりしたかたくて白い石英を表します。
つまり、「確」は石のようにかたくて、しかも明白な、という意味を持ちます。

「鶴」という漢字は、「とり・とりへん」が部首で、会意兼形声文字に属します。「隺」の部分は「カク」を音符とするのですが、「隹」の部分も鳥を表し、天に向かって高く飛ぶ白い鳥、「鶴」が成り立ちました。「隹」は他にも、「曜」、「隼」、「椎」など多数の漢字に使われています。

ちなみに「進」という漢字は、「辵」+「隹」で鳥が飛ぶように前に進むさまを表しています。
「集」という漢字は、たくさんの鳥が木に集まるようすを表しています。

「我」は古代のほこだった。

「我」という漢字の語源を紹介します。

「我」という漢字はもともと象形文字に属します。象形文字とは、物の形をかたどって字形とされたもので、「日」「月」「人」「木」などがこれにあたります。「戈」ほこは「我」がもとととなった部首です。「矛」とは違って柄に対して垂直に取り付けられた刃がギザギザになっている武器、あるいは道具です。「戈」は「戦」「武」という漢字にも使われています。(※「矛」は柄の先端に刃が付いて槍の形状をしたものをいいます。)
武器、あるいは道具は、国のために使うためのもの、お供えに捧げる羊の肉に使うもの、さらには大切な時にだけ使うものという意味を持つようになりました。

つまり、「我」は普段は大事にしまっているけど、ここぞというときは主張するという意味で、第一人称の自分を指すようになりました。

「義」はお供えの羊とほこでできている。

羊

「義」という漢字の語源を紹介します。

「義」という漢字はもともと会意兼形声文字に属します。会意文字とは、漢字のパーツを結合させてそれらの意味を書き表したもので形声文字とは、漢字のパーツとパーツを結合させ、一方を発音の記号、他方を意味範疇の記号を用いて書き表された文字です。両方を兼ね備えた文字です。
「義」は、「羊」と「我」が組み合わされています。
神に捧げるお供えの羊とギザギザの刃がついたほこで、形が整った欠陥がない羊を表し、きちんとしてかっこうがよいと認められるやり方を意味するようになりました。

ちなみに、「議」という漢字は「言」が加わることで、きちんと整った折り目のある話を意味します。

「危」の中に人が二人いる?

「危」という漢字の成り立ちを紹介します。

「危」はもともと会意文字に属します。会意文字とは、漢字のパーツを結合させてそれらの意味を書き表したものです。
「厂」の部分は高い崖を表し、上の「ク」の部分で上からのぞき込む人と「厂」の下の部分で怖さのあまり、しゃがみこむ人の2人の姿が表されています。

普段よく使う漢字ですが、成り立ちに関心を持つとその漢字をもっと身近に感じるものです。

「疑」:大丈夫かな?ちゃんと歩けるかな?

遊んでいる娘を振り返る父

「疑」という漢字の成り立ちを紹介します。

「疑」は会意兼形声文字に属します。「疋」の部分が部首にあたり、「ひき」といって「足」を意味します。マは「子」を意味し、子どもが足を止める様子を表しています。左側は「矣」がもとの形で、人が後ろを振り返って立ち止まる様子を表しています。

つまり、「疑」は愛児に心引かれてたちどまり、進みかねる様子、思案にくれて進まない様子を表した漢字です。

「月」にはそっくりさんがいる?【部首のお話】

「月」を含んだ漢字の部首を紹介します。

「つきへん」

「月」という漢字自体は象形文字です。三日月を描いたもので、まるくえぐったように、中が欠けていく月を表しています。
古代の人々は月を見て、時間の流れを感じ取っていたことから、時に関することが「つきへん」の漢字で表されています。
「朝」・「期」・「望」などが「つきへん」の漢字です。
(※「服」は「つきへん」に属しますが、実はもとの部首は「舟」でした。月と書き誤って今日に及んだのです。)

「にくづき」

月の形をしていても、全く別の部首が「にくづき」です。「肉」という文字が変化したもので、体に関することが「にくづき」の漢字で表されています。
「胸」・「腸」・「腕」などが「にくづき」の漢字です。

「タ・ゆう」

「タ」という部首も「三日月」を描いたものと、「肉」が変化したものとがあります。
三日月に由来する漢字は、「夕」・「外」・「夜」などです。
「多」という漢字は、会意文字に属しています。肉を重ねて、たっぷりと存在することを示しています。お肉食べ放題のイメージです。

「骨」は実はパズル?

「骨」という漢字の成り立ちを紹介します。

「骨」はは会意兼形声文字に属します。部首は「ほね」または「ほねへん」です。こちらは「にくづき」には属しません。月の上の部分は、「咼」または「窩」がもとの形です。もとの文字は結構複雑な形をしていたという漢字は多いものです。

「咼」は幾何学的な形にも見えますが、実は上の部分が大きく穴のあいた関節の受ける方のほね、下の部分がその穴にはまり込む関節の下の方のほねを表している象形文字です。
つまり、「咼」に「肉」を加えて「骨」という漢字が成り立っています。

ちなみに、「過」という漢字は、「咼」に「辵」(足の動作)が加わり、するするとさわりなく通過すること、つまり勢い余って、行きすぎるという意味を持つ漢字です。

「経」がたて、「緯」がよこのわけは?

地理で登場する「経線」と「緯線」。
どっちがたて線でどっちがよこ線?中学1年生の時、迷ったことはありませんでしたか?
そこで、「経」と「緯」の成り立ちを紹介します。

「経」のもとの字は「經」で、会意兼形声文字に属します。右側の字(音ケイ)は、「巛」の部分がたて糸を表し、上のわくから下の台へ、まっすぐに張り通したさまを描いた象形文字です。「經」はそれを音符とし、糸へんをそえて、たて糸の意味を表した漢字です。

「緯」の「韋」(音イ)は、口印のまわりを、上の足は←方向に、下の足は→方向にめぐるさまを描いた会意文字です。
ちょうど、囲炉裏をはさんであぐらをかいた二人の足の形を示したようなイメージです。
「韋」は、「たがいちがい」「回転」「繰り返し」などを意味します。
つまり「緯」は、「糸+(音符イ)韋」で、たて糸の間をめぐってゆきつ戻りつするよこ糸を表した漢字です。

これで「経」と「緯」が覚えやすくなったのではないでしょうか。

「阝」の左と右、違いはあるの?

同じような形でも、一方は偏(へん)、片方は旁(つくり)という漢字があります。
「阝」が漢字の左側にあると、「こざとへん」、右側にあると「おおざと」といいます。どう違うのでしょうか?
「阝」という形をした「こざとへん」と「おおざと」の違いを紹介します。

「阝」(こざとへん)=「阜」

左側の「阝」(こざとへん)は、もともとの文字が「阜」で、「」・「」・「盛り土」・「階段」などを表します。
「阜」の上の部分は、ずんぐりと土を積み重ねたさまを描いた象形文字です。さらに十(あつめる)を合わせた文字で、「まるくふくれる」という意味を表します。(※「阜」という漢字は、現在でも「岐阜」で使われていますね。)
「阝」(こざとへん)の漢字は、「防」、「隆」、「阿」、「院」など多数存在します。
ちなみに、「陸」という漢字は、分解すると「阜(おか)+土+八(ひろがる)+土」で構成された会意兼形声文字です。つまり、「阜」は土が高く積もって広がるさまを表し、さらには、もりあがって連なるという意味を含みます。

「阝」(おおざと)=「邑」

右側の「阝」「おおざと」は偏(へん)ではなく、旁(つくり)です。もとの形は「邑」で、「」・「」・「」などを表します。「邑」は会意文字で、分解すると、「口(領地)+巴」となります。「巴」の部分は、人が体を平伏して服従したさまを表します。つまり、「邑」は人民の服従するその領地を表します。
「阝」「おおざと」の漢字は、「都」・「郎」・「部」・「邦」など多数存在します。
例えば、「郊」という漢字は、会意兼形声文字に属し、「交(まじわる、行き来する)+巴(音符)」で構成されます。「郊」は町から行き来できる範囲の間近い村里を意味します。

「こざとへん」は「阜」、「おおざと」は「邑」ということで、もとの形が全く違いました。

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